学生時代にモータースポーツに興味を持った方は、大学の自動車部やモータースポーツサークルに参加して、ジムカーナ競技やサーキット競技に打ち込んだ方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、学生時代は車を持てず、大人になった今こそ、遅咲きながらモータースポーツを楽しみたいと考えた方も少なくないはずです。
ただ、実際にスポーツ走行を楽しむと言っても、漫画の主人公たちのように峠や高速道路のような公道で、バトルを行ったり、ギリギリのタイムを競ったりする行為は立派な犯罪であり、良識を持っている大人がやることではありません。
そんな訳で、今回はそんなあなたがこれからモータースポーツを始めるなら、どうすればよいのか簡単にまとめてみました。
モータースポーツを体験する
まずはモータースポーツに参加して、実際にスポーツ走行を体験してみることがおすすめです。
ショップや法人・メディアなどが主催するクローズドのサーキット走行会やジムカーナ走行会に参加してみましょう。
すでにスポーツモデルの車を購入していたり、カスタマイズ・チューニングを楽しんでいるようであれば、お世話になっているショップで聞いてみると良いでしょう。
ジムカーナやサーキット走行会はスピードレンジの違いこそあっても、アルト、ミラなどの軽自動車クーペ。
ヴィッツやデミオ、マーチなどのコンパクトカーや一般的なセダンなどもでも、MT、ATどちらでも問題なく参加することが可能です。
ただ、ジムカーナ競技を本格的に楽しむなら、サイドブレーキターンなどを多用するため、最近の電子式パーキングブレーキやフットペダル式では厳しい部分もありまので、ジムカーナやドリフトを練習したい方は愛車選びの際にご注意を!!
スポーツ走行会は多少の費用は必要ですが、多くの走行会の参加では特別に何かを購入したり、チューニングした車両も必要なく、団体に加盟したりすることなく、購入時のノーマル状態の車両で気軽に参加できます。
また、走行会などに参加することで車仲間も増えますし、あなたがやって行きたいモータースポーツが何かも正確に分かってくるはずです。
モータースポーツライセンスを取得する
何度か体験会などを楽しんで、本格的にはじめてみようと思ったら、国内の公式モータースポーツ戦に出場するための入口となるのが、「国内Bライセンス」。
通称「Bライ」などと呼ばれているライセンスです。
学生時代に競技に参加していた方は先輩方の勧めで取得されている方も多いのですが、これまであまりモータースポーツに興味がなかった方なら、誰も教えてくれなかった存在なのかも知れません。
各種法人やショップが主催するサーキット走行会やジムカーナ体験会では、特別ライセンスを取得することなくスポーツ走行を楽しむこともできます。
しかし、もう少し本格的にサーキット走行やジムカーナ競技を練習し、ドライビングテクニックを磨いてみたいと考えているなら、次のステップとして国内のラリーやジムカーナ、ダートトライアルの公式戦にも参加できる「国内B級ライセンス」の取得を考えることになります。
ライセンスと言うと「免許」のことですので、「自動車免許の時のような筆記試験や難しい実技試験があるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
ゲーム好きによく知られるプレイステーションの人気ゲーム「GT(グランツーリスモ)」シリーズなどでは、レースの参加に必要なB級ライセンス取得のために実技試験がありました。
ところがあれはゲームの話で、実際のB級ライセンスは2時間ほどの座学講習を受けるだけで取得できます。
講習会に参加する場合、事前に「持参するもの」「必要な費用」などは主催者に連絡して確認しておきましょう。
実際の講習会の内容は、「国内の競技規則」や「国内の競技車両規則」などの諸規則(ルール)の説明、ご自身がモータースポーツを始めるにあたって必要となる心構えなどになっています。
ただし、このライセンスは「JAF」こと「日本自動車連盟」が統括管理しているため、ライセンス取得には自動車運転免許証(普通免許)のほか「JAF個人会員」であることが必要となります。
ところで「JAF」ってどこかで聞いたことがあるけど、モータースポーツではピンとこない方もいらっしゃるかも知れません。
それもそのはず、自動車ディーラーやショップにも入会案内のパンフレットがおいてある。
「ガス欠」「鍵の締め込み」「路肩で脱輪」などで頼りになるロードサービスで有名なあの「JAF」のことです。
知らないうちにもう会員になっている方も多いかも知れませんね。
ちなみにすでにJAF会員の方でも両親の家族会員だったりする場合でも、「JAF個人会員」にならないとモータースポーツライセンスが取得できませんので、Bライセンスの取得を考えている方は「個人会員かどうか」にご注意ください。
Bライセンスって? Bライセンスでできること
ここで言う「Bライセンス」は「国内Bライセンス」のことを指します。
上級ライセンスには「国内Aライセンス」や「国際Bライセンス」なども存在しますが、そちらの説明は後述するとして、まずは「国内Bライセンス」で参加できる競技について説明します。
Bライセンスで参加可能な競技は、「ラリー」、「ジムカーナ」、「ダートトライアル」、「サーキットトライアル」となっています。
ちなみに「サーキットトライアル」はレースの予選のような方式で、実際にサーキットを走行してベストタイムを競う競技です。
お気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、「Bライセンス」で参加可能な競技に「レース」はありません。
実際に車同士のバトル(競争)を楽しみたい場合は、1つ上位の「Aライセンス」が必要になります。
ただし、レースとなるとクラッシュなどの危険性も一気にアップし、車両のカスタマイズや維持の費用もかさみますのでご注意ください。
メリット・デメリットは?
Bライセンスのメリットは上記でも説明した、国内の公認モータースポーツに参加することが可能なことです。
Aライセンスと比べて大きな違いは、「レース」競技がなく、参加できるのはタイムを競う種目のみですので、よりドライビングテクニックを磨く自分との戦い的なニュアンスが多いです。
ただ、クラスアップしてレースに参加する場合にもBライセンス競技は、スポーツ走行の基本となるものですので、まずはBライセンスの競技で腕を磨いていくことをおすすめします。
特別な始める際には特別なカスタマイズも必要ないので、費用的にも気軽に参加できるモータースポーツとしてのメリットがあります。
もちろん、腕が上がればAライセンス所持者も顔負けなタイムを叩き出すことも可能です。
また、JAFの会員に定期的に送付される会報の他、AFスポーツの会報が年4回発行され、登録している住所に届きます。
モータースポーツ用のライセンスなので、使用用途はそれくらいなのですが、車に詳しくない人には「俺ってBライセンス持ってるんだぜ」といった感じでドヤ顔をすることもできるかも知れません。
デメリットはJAFの年会費のほか、ライセンスの更新費用が3100円ほどかかるくらいでしょうか?
ただ、実際にモータースポーツを楽しめると考えれば、決して高い料金ではありません。
各種競技の種類について
「ラリー」
ちなみにラリーはWRCのような公道を通行止めにしてレースする競技を想像するかたも多いのですが、それはラリー競技の中で「SS(スペシャルステージ)」と呼ばれるもので、他にも公道で法定速度を守りながらチェックポイントまでのタイムの正確性を競う「アベレージラリー」と呼ばれる競技もあります。
この競技は早くても遅くてもだめなので、ドライバーと組むナビゲーターの腕にも左右される競技です。
車両そのものには大きな変更は必要ありませんが、ナビゲーターが必要だったり、一般的な競技とは少し違っています。
「ジムカーナ」
ジムカーナは舗装された路面にパイロンなどで任意に設定されたコースを1台ずつ走行し、そのタイムを競うモータースポーツです。
駐車場のようなスペースでのコース以外に、専用のジムカーナコースも存在します。
普段使用しているクルマをそのままの状態で使うことができるという、手軽さを持っていながらドライビングテクニックが顕著にあら合われる奥の深い競技です。
舗装路面での走行ですが、サーキットと違って、直線が短く絶対的な車速のアベレージが低いため、失敗しても車のダメージも少なく安全。
360度ターン、スラロームなどのテクニカルコースは競技をしていても楽しいものです。
ジムカーナはライセンスさえ取得すれば誰でも参加でき、しかも車を操る基本テクニックを取得できるオススメなモータースポーツです。
懐かしいマーチでのジムカーナ pic.twitter.com/TEsF4mqIyg
— けいれい (@keireineet) 2015年7月16日
マーチだって楽しめます。
実はマーチはワンメイクレースもあったり、意外とモータースポーツも楽しめるんですよ。
「ダートトライアル」
ダートトライアル(通称ダートラ)は、ダートつまり泥濘や砂利など未舗装路面コースでのタイムを競うスポーツです。
WRC(ラリー競技)のSSに似た競技ですが、こちらは1台ごとに走行してタイムを競います。
サーキットと違い、路面の摩擦係数が少ないため、車両のスライドをコントロールするなどのテクニックが必要です。
豪快に土煙を上げながらのスライド走行などは圧巻。
サーキットほどではないですが、昨今の車の性能向上のため、平均速度は早めです。
WRCのような走行にあこがれている方にはオススメの競技ですが、ベース車両の改造に少しお金が必要なのが難点かも知れません。
甲高いマイベックV6の快音を響かせていたSC1クラス(仕様)のFTO
( ˘ω˘ )#ダートラ pic.twitter.com/zQE9H3vwLB— しゅん (@sk192532435sk) 2018年8月19日
ダートラを駆け抜けるのは、今はなきホンダインテグラの登場まで、国内FFクラス最高のハンドリングマシンだった三菱FTOですね。
「サーキットトライアル」
サーキットトライアルの成り立ちは1997年制定と比較的新しい競技です。
レースのように他のクルマとバトルをすることはありませんが、サーキットを全開で走れるため、スピードが好きな方におすすめです。
多くの場合は全員で2回、数ラップを走行しベストタイムで順位を決定する方式で行われます。
排気量などでクラス分けがされているため、コンパクトカーなどでも楽しむことが可能です。
もっと深くモータースポーツに関わりたいなら、競技ライセンスの種類について
これまで説明させていただいたBライセンス以外にも、下記のようにたくさんのモータースポーツの競技ライセンスが存在します。
Bライセンスを取得して、更にステップアップしたい方や仕事としてモータースポーツの競技に携わって行きたい方は、それぞれのライセンス取得を目指すことも良い目標になるかも知れません。
4輪自動車競技用ライセンスの分類
競技参加者(エントラント)
チーム監督になるのに必要なライセンス。
国内・国際があります。
スーパーライセンス
モータースポーツの頂点とも言える「F1世界選手権」に出るための特別なライセンスです。
国際Aライセンス
GP2、インディカー・シリーズの参加が可能なライセンス。
国際Bライセンス
WEC(世界耐久選手権)やWTCRことFIA世界ツーリングカーカップ。
スーパーフォーミュラ、ルマン24H、スーパーGTなどに出るために最低必要なライセンス。
国際Cライセンス
上記以外の国際格式のレースに出るためのライセンス
取得資格は申請日から1年以内に国内の公認レース(JAF認定)に参戦し、2回以上完走している。
もしくは公認のラリー・スピード競技の日本選手権で6回以上完走。
国際R(ラリー)ライセンス
WRCやAPRC、ダカールラリーなど、国際ラリー戦に参加するためのライセンス
ドラッグライセンス
ドラッグレースに出るためのライセンス。国内・国際があります。
国際ソーラーカーライセンス
公式の国際ソーラーカーレースに出るためのライセンスです。
私もソーラーカーに専用ライセンスがあるのは知りませんでした。
国内Aライセンス
一般的な国内レース競技に参加するために必要なライセンスです。
受験資格はBライセンス競技への参加経験が1回以上あること。
Bライセンスで基本を覚えて、サーキット競技でレースに参加したい方のステップアップライセンスになります。
Aライセンスでは筆記と実技の試験があるのですが、試験内容は難しくないので比較的簡単に取得できます。
趣味レベルのモータースポーツであれば、ここまで取得しておけば困ることはないでしょう。
国内Bライセンス
上記で説明したラリーやジムカーナ、ダートトライアル、サーキットトライアル等に出場可能なライセンス。
モータースポーツを始める方の入口となるライセンスです。
公認審判員ライセンス
公式競技においてレースを安全に運営するための審判となるためのライセンスです。
レースに出るのではなく、レースの運営に携わりたい方におすすめです。
公認審判員ライセンスは大きく分けるとコース、計時、技術の3種類ですが、それぞれA1、A2、B1、B2、B3の5段階に分かれています。
参考出典:JAFスポーツ
まとめ
モータースポーツのライセンスについて、理解していただけましたか?
この記事に触れて、少しでもモータースポーツに興味を持っていただけたなら幸いです。
本気で興味を持ったなら、まずはJAFの個人会員(一般的な会員のことです)に加盟して、Bライセンス取得をしてみてください。
きっと新たなカーライフの扉が開くことでしょう。