あなたの愛車の燃料は何ですか?
車の話に耳を傾けていると、
「ハイオク指定の車に間違ってレギュラーを入れてしまったけど 」
「軽自動車って軽油で走ると思っていた」
なんて話を聞くこともあります、
ハイオク、レギュラー、軽油?
現在、乗用車として使われる車には、使用しているエンジンの種類によって、主に上記の3つの燃料が使用されています。
基本的に国産ハイオク車の多くは、レギュラーを入れても本来の性能を発揮できなくなったり、燃費が悪化したりすることはありますが、 緊急措置としてレギュラーとハイオクを入れても即故障して走らなくなることはないように作られています。
ただし、軽自動車に軽油を入れると故障してしまいますので、こちらは要注意です。
そんな訳で、今回は自動車の燃料についての疑問にお答えしたいと思います。
ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車の違い
まず、電気自動車(EV)を除くと、車にはディーゼルエンジンとガソリンエンジンがあります。
ハイブリッドもあるじゃないか?という声も聞かれますが、ハイブリッドエンジンも基本的には電気モーターを備えたガソリンエンジンモデルですので、燃料はガソリンです。
ガソリンエンジンは名称の通り「ガソリン(ハイオクかレギュラー)」を燃料として使用し、ディーゼルエンジンは「軽油」を燃料として使用します。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃焼方式の違い
最近は欧州で注目され、国内でもマツダなどが採用したクリーンディーゼル車の人気もあり、ときおりガソリンスタンドでのガソリンと軽油の取り違い(油種の入れ間違い)による故障が発生し問題となっています。
出典:マツダ クリーンディーゼルエンジン http://www.mazda.co.jp/
しかし、なぜ燃料を間違えると壊れてしまうのでしょうか?
その理由はレギュラーエンジンとガソリンエンジンの仕組みの違いにあります。
特に両者は燃料の燃焼方式が大きく異なっており、そのためガソリンエンジンの燃料に軽油を使用したり、逆にディーゼルエンジンの燃料にガソリンを使用することはできません。
まず、ガソリンエンジンは、ガソリンと空気をシリンダー内で混ぜて(これを混合気といいます)圧縮し、点火プラグ(またはそれに相当する装置)の火花で火をつけて燃焼(爆発)させ、その反発のエネルギーでクランクシャフトを回し動力にします。
対するディーゼルエンジンは先にシリンダーで空気のみを圧縮、高温となった圧縮空気に軽油を噴射することで、軽油が発火燃焼し、動力を発生させます。
このように同じ内燃機関という分類であっても、燃焼させる仕組みやタイミングが全く異なっています。
そのため、ガソリンエンジン車に軽油を使ったり、ディーゼル車にガソリンを使うと、エンジンは異なる燃料を正しく燃焼させることができず、故障の原因となってしまいます。
一昔前は普通乗用車で軽油を使用するのは、一部のSUVやワンボックスモデル程度でした。
しかし、最近はBMWなど外国車やマツダのクリーンディーゼルモデルも軽油を使用しているため、乗り慣れない車を給油する際には、必ず油種を確認するようにしましょう。
また、ばかばかしいと思われるかもしれませんが、たまにペーパードライバーの方などが、軽自動車のレンタカーなどを借りた場合に発生する事故もあります。
「軽自動車だから軽油」と考え、軽油を給油して車を壊ししたという事例です。
これは軽自動車の「軽」という文字を油種とユーザーが勘違いした例です。
当然ですが、軽自動車の「軽は」油種ではなく、車のサイズおよび税制の規格区分であり、燃料の違いではありません。
軽自動車は一般的にガソリンエンジンなので、故障して当然ですね。
レギュラーとハイオクの違いはオクタン価の違い
次に同じガソリンエンジンのハイオクとレギュラーの違いです。
ガソリンエンジンの場合、軽油とガソリンの違いほど差はなく、入れ間違えたことによってすぐに故障するということにはならないので安心してください。
では、レギュラーとハイオクガソリンのどこに違いがあるのかというと、オクタン価の違いになります。
オクタン価とは
オクタン価とは、ガソリンのエンジン内での自己着火のしやすさ、ノッキングの起こりにくさ(耐ノック性・アンチノック性)を示す数値です。
このオクタン価が高いほど、ノッキングが起こりにくく質も良いのでハイオクは若干割高になっています。
つまり「ハイオク」=「ハイオクタン」のガソリンのことを表します。
日本のガソリン規格は89オクタン以上と96オクタン以上で分類されており、 一般的にはレギュラーが90~91オクタン。
ハイオクが98~100オクタンの商品が販売されています。
ここでいうノッキングとはMTの車の発進時にエンストしそうになるあれのことではなく、 エンジン内部の異常燃焼(デトネーション)のことを指しています。
ちなみに軽油でも耐ディーゼルノック性を示す数値としてセタン価がありますが、ハイセタンという燃料は販売されておりません。
ハイオク指定車にレギュラーを入れたら?
ハイオク車にレギュラーを入れた場合、即壊れることはありませんが、燃費低下、エンジンのパフォーマンス低下、エンジン内の煤(カーボン)の堆積による将来的故障のリスクなどがあります。
ハイオク(無鉛プレミアムガソリン)指定エンジンが、本来の性能を発揮するためには燃料と空気を合わせた混合気をシリンダー内で圧縮し、最適のタイミングで着火(点火)させてあげる必要があります。
野球でも、強打のバッターがピッチャーの投げたボールに対し適切なタイミングでスイングすれば、力が適切にボールに加わり、ボールはスタンドまで綺麗に運ばれてホームランとなります。
しかし、振り抜くタイミングがずれるとピッチャーゴロになったりしますよね。
エンジンも同様で、高性能なエンジンではこのタイミングがよりシビアな作りになっており、その代わり安価なエンジンよりも高圧縮で高出力であったり、高回転まで淀みなく回るエンジンであったりします。
このシビアなエンジンにオクタン価の低いガソリンを入れた場合、適切な点火タイミングより早く混合気(ガソリンの霧と空気が混じったもの)が燃焼・爆発し、ノッキングを起こします。
『ノッキング』とは、混合気が圧縮段階でシリンダー壁に押し付けられた際、高温・高圧状態になり、想定より早く自然着火してしまう異常燃焼(デトネーション)の現象を表します。
異常燃焼(デトネーション)状態は燃焼室の隅々のガスの正常(適切)な燃焼タイミング前にガスが自然着火してしまう(過早発火)状態となっています。
車内にいると気がつかないかもしれませんが、シリンダー近くよりカリカリという金属音が出るような特徴があります。
ノッキングが起こるとガスが完全燃焼しない状態のため、エンジンの異常過熱をまねく原因にもなります。 そのままの状態で無理に乗り続けると、ピストンやシリンダーなどの焼き付き等、エンジン故障の原因になることもあります。
ちなみにレギュラーガソリン車はあらかじめハイオクガソリン車よりもマージンを多く取っており、最高のパフォーマンスを発揮する点火タイミングよりも、若干早めのタイミングで点火するようになっています。
その分、ハイオク車よりエンジンのパフォーマンス的には劣る傾向があります。
高級車だからハイオクということではなく、あくまでエンジンの特性と考えるのが正しいです。
その為、300万円台の高回転を楽しむスポーツカーはハイオクで、600万円を超える高級ミニバンではレギュラーということもあります。
ハイオク仕様車にはハイオク専用とレギュラー対応がある
国産ハイオク指定車の多くはレギュラーにも対応していますが、外国車の一部はハイオクにしか対応していないこともあります。
レギュラー対応車とは
最近のハイオク指定の国産車ではレギュラー対応のハイオク指定車が多く、レギュラーを入れた際には車が自動的に検知し、意図的に混合気の燃料を濃くして燃焼温度を下げたり、点火タイミングを早めて異常燃焼をおさえたりする機能がついています。
なお、エンジンやガソリンの冷却を高め、シリンダー壁面やガソリンの温度を下げれば、圧縮中の混合気は着火点に達する事がなくなり、確かに『ノッキング』は起こりにくくなります。
しかし、これはエンジン本来の最適タイミングの燃焼とは異なり、燃費悪化やパワーの低下を発生させます。
ハイオクの料金をケチるためにレギュラーを入れても、結果的に損していることが多いので、緊急時以外はオススメしません。
とはいえ、僻地までドライブに行った際にガス欠しても、緊急措置として現地で手に入るレギュラーガソリンを入れて帰ってくることも可能ですので、保険として考えると便利ですね。
ハイオク専用車とは
では、ハイオク専用車とはどういったものでしょう。
それはレギュラー相当となるオクタン価のガソリン使用を想定していないエンジンということです。
例えば欧州。
有名なBMWやベンツの故郷ドイツでは、一般的に流通しているガソリンのオクタン価は95前後となっており、日本のハイオクに相当するオクタン価がレギュラーのように流通しています。
この上にplusというハイオクに当たるグレードがあり、こちらが98前後。
この場合、その車の一般的に販売されるエリアで、日本のレギュラーに該当するオクタン価90~91を使用することが想定されないため、特に「高性能エンジン」でない普及車、廉価モデルの場合であっても「ハイオク専用」の車両ということになります。
また、ちょっとイレギュラーなケースとなりますが、自動車レースなどを前提に改造した車では、法的には公道を走行可能な車であっても、一般的に流通するノーマル状態の車と異なり、エンジンの圧縮比、燃料の噴射量、点火タイミングなどがシビアになっており、ハイオク以外では故障してしまうケースもあります。
憧れのスポーツカーを手に入れようと中古ショップを訪れた際、すでに好みのチューニング(改造)が施されているのでお得と思って購入したが壊してしまった。
こんな例も存在するので、カスタムカーなどを購入する際には必ず店舗で確認をするようにしましょう。
レギュラー車にハイオクを入れたら?
それでは逆に「レギュラーガソリン指定の車にハイオクガソリンを間違えて入れた場合」はどうなるのでしょうか?
レギュラー指定のエンジンは「圧縮比をあげた際に勝手に発火してしまいやすい燃料で通常通り運用するための点火時期が設定されている」エンジンです。
ガソリンエンジンを輪ゴムを巻いて車輪を回すオモチャに例えると、ハイオクは強い力で引っ張っても切れにくい頑丈な輪ゴム。レギュラーは力を入れすぎると切れてしまう普通の輪ゴムようなものだと想像してください。
普通の輪ゴムはあまり巻きすぎると力に耐え切れず切れてしまいますが、頑丈な輪ゴムは普通の輪ゴムよりも強いねじっても切れることなく、より力を蓄えて大きな動力を生むことができます。
もちろん、普通の輪ゴムと同じ力で巻けば、問題なく普通に車輪は回ります。
それと同様にハイオクガソリンは「レギュラーよりも限界まで圧縮して点火することで、エンジンに高出力を発揮させることができるガソリン」です。
もちろん、レギュラーの圧縮比・タイミングで点火した場合も問題なく燃焼しますので、レギュラー車にハイオクでも普通に走行可能です。
しかし、圧縮比や点火タイミングは「あくまでレギュラー仕様」となっているため、一部の噂で聞くような「国産のレギュラー仕様車にハイオクを入れたらパワーアップする」ということは通常の用途で使用するのであればほとんどありません。
とはいえ、一部過酷な環境下「デトネーションを起こしやすい状態」で使用するのであれば、多少の効果は見込めると思います。
また、「ハイオクは燃えにくいのでレギュラーエンジンに入れたら、100%燃焼できずにエンジンに悪い」という噂もあります。
しかし、こちらは先の項目でも書いたように、オクタン価とはエンジン内で高温・高圧縮となった際の「自己着火」のしやすさ、ノッキングの起こりにくさ(耐ノック性・アンチノック性)を示す数値です。
ガソリンエンジンはディーゼルエンジンと違って、自己着火させるエンジンではなく混合気を圧縮し、適正のタイミングで点火する仕組みです。自己着火しなくても混合気に火花を入れて着火させるので、問題なく燃焼します。
そのため、レギュラー仕様車にハイオクを給油しても何の問題もなく走ってくれます。
ただ、燃料価格が高いだけで、エンジンに悪いということもありません。
一応、国産のハイオクガソリンには、エンジン洗浄剤などの添加剤機能が追加されていることが多いため、エンジンの浄化など多少の効果は期待できるかもしれません。
ただ、添加剤の効果を狙うなら、毎回レギュラー車にハイオクを入れて混ざっている少量の添加剤の効果を求めるよりも、フューエルワンなどの評判の良い添加剤を別途購入し、定期的に使用する方が効果的にもコストパフォーマンス的にも優れているのは言うまでもありません。
まとめ
自家用車の燃料の違いはいかがでしたか?
レンタカーや複数台所有の場合、乗れ慣れない車ではうっかり油種選択を誤ってしまうこともありますので、しっかりと確認することが大切です。
せめてお車のエンジンがガソリンエンジンなのか、ディーゼルエンジンなのかを確認しておけば、致命的な事故は防ぐことができます。
さらにハイオク指定の場合、「ハイオク専用」なのか「レギュラーにも対応」なのかは、取扱説明書などに記載されておりますので、こちらも乗る前にあわせて確認しておくと安心ですよ。
あなたのカーライフに大きな影を残さないためにも、油種の確認はしっかりと行いましょう。