これから購入する愛車にハイブリッドカーなど、エコカーを選ぼうと考えている方も多いと思います。
世間でエコカーというとトヨタのハイブリッドカー「プリウス」を思い浮かべる方が多く、「エコカー」=「ハイブリッドカー」のイメージが強いです。
しかし、ハイブリッドカー以外にもバッテリーをコンセントで充電して走行する電気自動車やプラグインハイブリッドなど様々なタイプのエコカーが発売されています。
一口にエコカーといっても、使用用途によって本来の性能が発揮できないシチュエーションもあり、使用する方のライフスタイルにあった車種の選択が重要です。
今回は実際に販売されているエコカーのタイプを説明したいと思います。
エコカーとは
「Eco-car(エコカー)」とは有害な二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、燃費もよい自動車をまとめた言葉です。
環境対応の「エコロジー」と節約の「エコノミー」からとって、「エコカー」と呼ばれています。
ちなみに英文では「Eco-friendly car(環境にやさしい車)」や「Fuel-efficient car(低燃費車)」と書くほうが一般に浸透しているようです。
そうなると「Eco-car」という言葉は和製英語のように感じますが、「The New York Times」などでも「Eco-car」と記載されていたこともある、ちゃんとした英語です。
エコカーは本来、燃費がよいだけではなく、地球温暖化対策のため温室効果ガスの削減や部品のリサイクルなどを含め、環境に対応する低公害な車を指しています。
しかし、残念なことに現状のエコカーは製造工程からの温室効果ガスの量を考えると、必ずしもエコロジーとは言えない部分もあります。
あくまで市場やユーザーの立場からすると、「燃費のよい(エコノミー)」を重視した車両のカテゴリーとして考えたほうが間違いないかもしれません。
ただ、少なくとも燃費が良いということは石油資源の節約にはなりますし、「エコカー」=「環境にやさしい車」というブランドイメージも大きく、車両のオーナーもプリウスなどを所有することで「私は環境を考えていますよ」と、さりげなくアピールできる部分も少なくはありません。
それでは実際にエコカーの種類を見ていくことにしましょう。
エコカーの種類
ハイブリッドカーの特徴
現在の市場の主流といっても間違いのないエコカーが「ハイブリッドカー」です。
ふたつ以上の動力源をもつクルマ、主にガソリンエンジンと電気モーターの両方を備えた車の総称です。
なお、「ハイブリッド」=「エコ」のイメージも強いのですが、起動時に最大トルクを発生することのできる電気モーターの特性を利用したスポーツカーも存在しているため、ハイブリッドカーが必ずしもエコカーなわけではありません。
通常のガソリンエンジン車に比べて燃費が良いこと、モーター走行時は静かであることなどメリットが多い反面、2つの機関を搭載することによる重量増やコスト面の悪化がデメリットと言えます。
また、ハイブリッドシステムは発電と駆動の方法から、「シリーズ方式」、「パラレル方式」、「スプリット方式(シリーズパラレル方式)」の3タイプに分かれています。
「シリーズ方式(直列方式)」とは
日産 e-POWER(シリーズハイブリッド機構) 画像出典 http://www.nissan.co.jp
シリーズ方式のハイブリッドカーは「エンジン」と「電気モーター」という2つの機関を持つハイブリッドといえるものの、エンジンはあくまで駆動力を得るものではなく「発電機」として作動させます。
発生した電気は一度大容量バッテリーに蓄えられ、その電力を使ってモーターを回すことで車両の駆動力となります。
簡単に表現すると「ガソリン(またはディーゼル)エンジン発電機で充電して走行する電気自動車」です。
シリーズ方式の歴史は古く、鉄道や船舶では昔から採用されていました。
後述するレンジエクステンダーEVと基本構造は同じですが、シリーズハイブリッドカーは電力をガソリンエンジンで発電することをメインとしており、燃料の給油が必須というところがレンジエクステンダーEVとの違いになります。
「シリーズ方式ハイブリッド」がオススメなユーザー:
エンジン音や排気音が好きなクルマ好きの方には向かないのですが、「エコドライブで遠くに行きたい」、「運転は好き」という方にオススメです。
ゆとりのトルクで加速を楽しんでもエンジンが唸るようなことがないため、高速道路でも静かなドライブを楽しめます。
また、エコカーの中でも電気自動車(EV)に興味があるものの、アパートやマンション暮らしで自宅に充電設備を設けることができない方にもオススメです。
「シリーズ方式」ハイブリッドの代表的なモデル
ノート e-POWER(日産)ほか
「パラレル方式(並列方式)」とは
スズキマイルドハイブリッド(モーターアシスト機構) 画像出典 http://www.suzuki.co.jp
パラレル方式はエンジンと電気モーターという搭載している2つの動力源を「それぞれ車輪の駆動に使用する」方式です。
シリーズ方式と違い、基本的な走行時は「発進から中速域までの部分をモーター」が担当し、「中速域から高速(巡行)域はエンジン」が受け持ちます。
通常エンジンはトルクとパワーを得るには回転数を上げる必要があるため、発進加速時にたくさんの燃料を使用して、燃費の悪化や温室効果ガスの発生量が増加します。
しかし、電気モーターは電源を供給して回転を始めた瞬間から、最大トルクを発生させることができます。
そこでパラレル方式ではエンジンの苦手な発進時や急加速時をモーターの駆動力に置き換えることで、燃料消費の悪化や温室効果ガスの発生を抑える効果を狙っています。
搭載するエンジンは通常のガソリン車と同等の出力を持ち、トランスミッション(変速機)も搭載していることから、バッテリーの電力が枯渇した場合にもガソリンエンジンだけで通常通り走行することができます。
モーターとバッテリーはあくまで「発進から中速域までの部分」をカバーすることができればよいことから、最低限の出力を持つサイズで構わないため、通常のガソリンエンジン車にシステムを搭載しやすいというメリットもありますが、あくまでモーターは補助としての動力で、単体で電気自動車としての能力を持ちません。
そのためストップアンドゴーの多い市街地の通勤や送迎、買い物などに威力を発揮する反面、郊外でバイパスや高速道路を使っての巡行に特化した使用となると、環境によっては単純にシステム分の重量増になるため、メリットを享受できないこともあります。
「パラレル方式ハイブリッド」がオススメなユーザー:
「燃費やエコを意識したいけど、エンジンの走行感覚が好きで、EVはちょっと味気ない」と感じるクルマ好きの方にオススメです。
あくまでモーターは低速からの加速にトルク生かすだけで、同クラスの小排気量車よりもキビキビとした発進加速を楽しみつつ、中速から高速域ではクルマらしいエンジンの加速音も楽しめます。
また、軽自動車などエコカーの中では比較的安価な車種も多く、使用方法も通常のガソリンエンジン車と変わりないため、日常の足にも気兼ねなく使用することができます。
「パラレル方式」ハイブリッドの代表的なモデル
インサイト(ホンダ)、CR-Z(ホンダ)、インプレッサスポーツハイブリッド(スバル)、ソリオ マイルドハイブリッド(スズキ)ほか
「スプリット方式(分割方式)・シリーズパラレル方式」とは
トヨタハイブリッドシステム(動力分割機構) 画像出典 http://www.toyota.co.jp
スプリット方式はシリーズパラレル方式と呼ぶこともあります。
遊星歯車機構(プラネタリーギア)を使い、エンジンと電気モーターからの動力を合成して使用したり、駆動力と発電機に分割(スプリット)したりする機構を備えたハイブリッドカーです。
シチュエーションに応じて、エンジンとモーターを使い分けるだけでなく、双方の動力を組み合わせて協力させたり、走行中の余剰エネルギーを充電に回することもできます。
動力分割機構のプラネタリーギアがトランスミッションの役割を兼ねることが可能で、他のハイブリッド車に比べると部品点数を抑えることができ、それが軽量化にも繋がることで、必然的に低燃費にも貢献します。
ただ、デメリットがないわけではなく、動力分割機構の制御が非常に複雑なうえ、特許などの関係で採用するメーカーが少ないのが普及の足かせになっている部分もあります。
「スプリット方式ハイブリッド」がオススメなユーザー:
平均して高い燃費性能と必要十分な走行性能を持ちながら、通常のガソリンエンジン車と変わらない使用が可能なため、購入資金に余裕のある方がガソリンエンジン車の上級モデルとして購入するのに適しています。
プリウスやアクアのように一目でエコカーと認識できる車種も多く、さりげなくエコをアピールしたいあなたにもオススメのモデルです。
通常のガソリン車に比べて高価ではあるものの、中古車を視野に入れることで、比較的リーズナブルに入手することも可能になってきました。
シリーズハイブリッドと同様に自宅に充電設備を設けられない方にもオススメできるため、比較的万人向けのエコカーともいえます。
「スプリット方式」ハイブリッドの代表的なモデル
プリウス(トヨタ)、アクア(トヨタ)、アクセラハイブリッド(マツダ)、330e(BMW)ほか
プラグインハイブリッドの特徴
トヨタPHVシステム 画像出典 http://www.toyota.co.jp
プラグインハイブリッドは外部電源から、例えば家庭用コンセントの差込プラグを用いて直接バッテリーに充電できるハイブリッド車です。
トヨタではPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、三菱自動車やアウディではPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)と記載されます。
スプリット方式(シリーズパラレル方式)のバッテリーを大容量化したシステムで、通常よりも電気自動車として走行できる距離が長くなっています。
そのため、家庭用の割安な夜間電力で充電することで、近距離であれば燃料を使用することなく、電気代だけで運用ができるうえ、バッテリーがなくなってもガソリンエンジンのハイブリッドカーとして使用できるメリットがあります。
また、その大容量バッテリーを生かして、家庭用の100V電源を取る機能を備えているモデルも多く、SUV車を利用したキャンプなどアウトドア利用時に電源を確保したり、災害時の非常用電源としても使用できることで注目を集めています。
デメリットとしては現状のインフラ環境では集合住宅や月極駐車場などを利用している場合、充電できる場所の確保が難しいこと。
また、車両の価格がハイブリッド車以上に高額であることなどがあります。
ただ、これから郊外でマイホームを建てることを考えている方なら、あらかじめ太陽光発電の蓄電システムを併設することで、さらに運用コストを安くすることもできますので、良い選択になるかも知れません。
「プラグインハイブリッド」がオススメなユーザー:
スプリット方式ハイブリッドのエコカーの購入を考えている方で、戸建てのマイホームを所有しているなど、自宅での充電設備を確保できるユーザーに適しています。
100Vの電源機能を備えているモデルもあるため、エコだけではなく防災意識の高い方やオートキャンプなど、クルマに新たな価値を求める方にもオススメできます。
「プラグインハイブリッド」の代表的なモデル
プリウスPHV(トヨタ)、ボルトハイブリッド(シボレー)、アウトランダーPHEV(三菱)、F3DM(比亜迪汽車)ほか
EV(電気自動車)の特徴
EV(Electric Vehicle)。その名の通り電気自動車のことです。
プラグインハイブリッドと同様に外部電源から充電した電気をバッテリーに蓄え、電気モーターを動かして走行します。
エンジンを持たないため、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出がありません。
エンジンや燃料タンクが必要ないことから、ハイブリッド車に比べて部品点数を少なく軽量化することができ、一度の満充電で100kmから200km近い距離を走ることができます。
自宅などで充電できる環境が整っており、走行するエリアが想定できるのであれば、非常に運用コストを安く抑えることができます。
エンジンなどで発電する機能を備えていないので、充電スポットの多い都市部を中心とした運用であれば心配ないありませんが、バッテリー消費の激しい登坂が多くある山岳エリア。
北海道のように1度の走行距離が長くなるエリアでは、自宅や駐車する拠点に充電できる環境を整えておく必要があります。
「EV(電気自動車)」がオススメなユーザー:
環境意識が強く、エコロジー&エコノミーを重視したカーライフを楽しみたい方のなかで、都市・市街地を中心にクルマを使用する方。
戸建てのマイホームを所有しているなど、自宅での充電設備を確保できるユーザーにオススメです。
購入金額は比較的高額になることが多い反面、一度購入さえすることができれば、日常の支出はコンセントで充電する電気代だけになり、トラブルさえなければ運用コストは非常に安く抑えることができます。
出先の充電スポットを使った充電ではメーカーが提供する定額プランなどを使用することで、ドライブの多い月でも燃料費を気にする必要がありません。
エクステリアのデザインも「EVならでは」なものが多く、周囲にもエコをアピールすることも可能です。
「EV」の代表的なモデル
リーフ(日産)、iMiEV(三菱)、eゴルフ(フォルクスワーゲン)、i3(BMW)、500e(フィアット)、モデルS(テスラ)ほか
レンジエクステンダーEVの特徴
レンジエクステンダーEVは電気自動車に発電用のエンジンを搭載したものです。
シリーズハイブリッドとシステム的には似ていますが、シリーズハイブリッドが「基本エンジンで発電した電力で走行する」のに対して、レンジエクステンダーEVは基本的にEVと同じで外部電源から充電し、「補助的にエンジンにより発電することでバッテリーの不足を補う」電気自動車です。
現在の市販モデルは(2017年5月)「BMWのi3 レンジエクステンダー」のみとなりますが、ロータリーエンジンを充電に使用するマツダデミオやなどが試作車両で走行テストを行っているようです。
「レンジエクステンダーEV」がオススメなユーザー:
EVの所有を考えているものの、自宅周辺に充電設備の少ない方や充電設備のないエリアでの移動が多いと考えられる方にオススメです。
とはいえ、基本的にはEVと同じシステムのため、自宅での充電設備は必須と考えて良いでしょう。
「EV」の代表的なモデル
i3 レンジエクステンダー(BMW)
まとめ
いかがでしたか?
単純にエコカーといっても様々な種類があり、使用環境によってそれぞれのメリットやデメリットがあります。
上記に挙げたタイプ以外にも、走行性能を犠牲にすることなく燃費も優れている「クリーンディーゼル」や「ダウンサイジングターボ」も人気を博しています。
せっかく購入したクルマが原因で、ストレスが多いカーライフになってしまっては本末転倒です。
これからエコカーの購入を考えている方も多いと思いますが、何より「あなたのライフスタイルに合ったシステムのクルマを選ぶ」ことが大切です。
それでは、あなたが最高の愛車と出会えることを願っています。