今、世間で注目されているタイヤチェーン義務化について誤った認識が広まっています。
チェーン義務化の噂のなかで聞かれるように「スタッドレスタイヤで走行できた道も、わざわざチェーンを付けなければならない」というなら、少々面倒に感じることもあるでしょう。
しかし、この取り組みの本来の意味は、上記のように無意味にチェーンを装備されるという事ではありません。
今回は「従来のチェーン規制」が、今回の改正によってどう変わったのか分かりやすくお伝えします。
タイヤチェーンの役割
冬の間、雪が降ることが多いエリアの方は、ほとんどの方がスタッドレスタイヤを装着されていると思います。
スタッドレスタイヤは通常のタイヤと比べると、低い気温でも硬化しない特殊ゴムが使用されているため、雪道におけるタイヤのグリップ力は格段に優れています。
しかし、雪道でのグリップ性能を考えるとやはりチェーンには劣ります。
従来の金属製タイヤチェーンは金属チェーンの凹凸により、凍結した雪道などでもスパイクのように路面を掴むことで、スリップしにくいようになっています。
また、非金属のタイヤチェーンでは路面にくい込むよう、金属のピンがついており、それがスパイクタイヤのスパイクと同様の役割を持ち、より高いグリップ力を発揮してくれるのです。
特にアイスバーン状態の路面の場合や、降雪量が多く路面に雪が多い場合などは、チェーンを装着することでより安全な走行を可能にしてくれます。
では、雪道を走る際は必ずチェーンが必要なのかというと、そういうわけでもありません。
タイヤチェーンは、あくまで路面状況が非常に悪い時の応急処置と考えましょう。
例えば長いトンネルを走行する際は、乾燥した路面をチェーンで走るという事になり、万が一チェーンが切れてしまうと大事故につながる恐れもあります。このため、状況に応じたこまめなチェーンの着脱が必要です。
タイヤチェーンはその形状から、かならず手作業で装着する必要があるため、車いじりに苦手意識の多い女性ドライバーの方は不安を持つ方が多いと思います。
できれば、雪が降る前にあらかじめ自宅の駐車場などで装備練習を行うなど、実際に大雪が降った際にスムーズに付けれるようになっておきましょう。
下のJAFの公式動画など、装着方法をわかりやすく解説している動画もありますので、わからない方はぜひ参考にしてみてください。
チェーンの装着方法
これまでのチェーン規制と義務化について
従来のチェーン規制
これまでも高速道路を中心に「冬用タイヤ規制」「チェーン装着義務規制」「チェーン装着車以外通行禁止」などの措置は行われていました。
しかし、これらは都道府県の公安委員会によって、道路管理者に指示されるという形で実施されていました。
道路交通法にはチェーン規制に関わる規制標識を含め、冬用タイヤやタイヤチェーンに関する規則はなく、チェーン装着が義務ではなく任意であったため、大雪などで路面状況が悪い際は、高速道路など通行止めの措置をとらざるおえなかったのです。
新チェーン規制
そうした問題点を見直し、道路交通法でチェーン装着に関する新たな省令が定められることになりました。
その特徴は「都道府県主導ではなく、国が主導する」という形になっている点あります。
新チェーン規制と、従来までのチェーン規制との大きな違いはここにあります。
この規制により、本来は大雪で通行止めになるような道路であっても、チェーンを装着した車なら通れるようになり、今までは通行できなかった状況でも走行できる可能性が生まれました。
また、国道、高速道路合せて全国13か所に指定区間が設けられました。
この指定区間は、勾配の大きい峠部で、これまでに大規模な立ち往生などが発生した区間をもとに決定した場所となっています。
2018年〜2019年シーズンは13か所となっていますが、今後も降雪による交通も上の大規模な影響が発生した際には、それに対応する形で増えていく予定となっています。
現時点での指定区間(国土交通省プレスリリース)
http://www.mlit.go.jp/common/001264475.pdf
こうした指定場所には新たに規制標識が設置されます。
また、大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪時にチェーン規制が行われる場合、移動式のLED標識が設置されるようです。
つまり、「雪が積もった道路はすべてチェーン装着しなければいけない」というわけではなく、この標識が設置された場所ではチェーンを装着しましょうという規制なのです。
したがって指定区間以外や通常の降雪状態であれば、スタッドレスタイヤでの走行は従来通り可能ということになります。
もし規制区間でチェーンを装着しなかった場合どうなるか
新たなチェーン規制は、道路交通法に基づく規制となりますので厳密にいえばチェーンを装着していない車は道交法・道路法違反となります。
違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
しかし、制度を徹底するための罰則は存在しても、罰則があることを煽って規制するものではありません。
その為、チェーン規制実施中にチェーンを装着していないからといって、その場でいきなり取締りをされるようなことはあまりないと考えられます。
ただし、規制下でチェーンを履いていない車によって重大な事故が発生した場合は、罰則が適用されると考えていいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
大雪による通行規制がなければ、チェーン規制が実施されない事がわかるかと思います。
心配されていたような取り締まりや排他的な規制ではないことが分かって、安心されている方も多いことでしょう。
しかし、冬の天気には油断は禁物です。
降雪の多いエリアでは、いつどのように天気が悪化するかわかりません。
いざという時にチェーンの装着が出来るよう、きちんと準備しておく事が大切です。
特に年末年始の連休に帰省などで雪国に車で向かう際には、天気予報などで目的地の天候をこまめにチェックし、不測の事態に対応できるように心がけましょう。
雪道でのトラブルが少しでも軽減できるよう、チェーンを有効に活用し、快適な冬のドライブを楽しみましょう。