コンパクトなSUVを探していてCX-3が気に入っているけど、内装や装備がデミオと同じような感じで、40万円以上の価格差の価値があるのかと、ライバルの迷っていた方に朗報です。
2018年5月のマイナーチェンジにより、お値段はほぼ据え置きで、より付加価値のあるコンパクトSUVとなりました。
今回の年次改良はマイナーチェンジとは言っても、エクステリアのデザインは小さな変更点にとどまったものの、内容としてはフルモデルチェンジばりの大幅な改良となっており、排気量アップによる余裕のある走りと、足回りのブラッシュアップ、遮音性の向上や電動パーキングブレーキの採用など、お値段は小さなプレミアムSUVと言える装備により、あえてコンパクトなSUVを選択したいあなたにとって、最善の選択になり得る1台となっています。
今回はそんなマツダCX-3について、分かりやすくまとめてみました。
CX-3ってどんな車?
CXー3はマツダの提唱する「SKYACTIV TECHNOLOGY」と「魂動(こどう)-Soul of Motion」デザインを全面採用したBセグメントのコンパクトクロスオーバーSUVです。 「魂動(こどう)-Soul of Motion」のラインアップとしては第5弾にあたります。
プラットフォームとなるのはホンダのヴェゼルがフィットをベースにしたように、マツダのBセグメントコンパクトのデミオです。
登場当時のCX-3でも、細かな質感や遮音性などはベースのデミオと比較すると、1ランク上の性能を持っていました。
ただ、比べればわかるというその性能も、デミオと同じほぼ同じ「SKYACTIV-D 1.5」のクリーンディーゼルエンジンと、ほぼ同等の内装でデザインでありながら40万から50万の価格差があり、それを埋めるほどのアドバンテージはクロスオーバーSUVのそのルックスの差以外はあまりない印象を感じるものでした。
そのため「これならデミオでもいい」とデミオを購入したり、もう少しだけ予算を増やして2.2Lクリーンディーゼルエンジンを搭載し、車格も大きな兄貴分CX-5を購入した方も多かったのです。
これはマツダのエントリークラスだったデミオが、プレミアムコンパクトと呼ぶと大げさかもしれませんが、実際にライバルメーカーのパッソやフィットなど、余裕のある軽自動車的な質感のコンパクトカーと違い、ミドルクラスの車種と比較しても遜色のない質感を持った車種であったことも一因でもあります。
実際に上位のアクセラのパーツを流用している部分もあった様ですし、購入者の満足度が高いことも頷けます。
今回のマイナーチェンジではCX-3は、その流麗なデザインには大きな変更を加えることなく、内装の質感、乗り心地や静粛性、SKYACTIV-Dエンジンを1.8Lとするなど、デミオと同じプラットフォームでありながら、デミオよりもゆとりの走りを備えることで、一線を画すプレミアムコンパクトSUVとして成長を果たしました。
今回の改善で何が変わったのか?
それでは今回、2018年5月の年次改良でCX-3の改善されたポイントのなかでも、注目すべきポイントを上げていきましょう。
操作性や乗り心地の向上
まず、新旧モデルを試乗して乗り比べるとわかる大きな部分は「G-ベクタリングコントロール」制御・電動パワーステアリング制御の最適化による、コーナーリング中のハンドルに対する挙動がより自然になったことがあげられます。
また、これまでCX-3の欠点はリアサスがトーションビームであることといわれていました。
しかし、足回りのしなやかなセッティングが好評で、「猫足」の異名をとることで有名なフランス車のコンパクトカー「プジョー208」や「308」も同じトーションビームサスペンションを採用しています。
軽自動車や低コスト優先のコンパクトカーとちがい、CX-3の4WDではデフがサブフレーム側に固定されているため、重量がバネ下にかかることを防いでおり、足回りの動きを妨げていません。
とはいえ、まだ硬い跳ねると言われていたCX-3は足回りも大幅な改良を行いました。
流石にダブルウィッシュボーンなどのマルチリンクに変更するという構造の見直しは行っておりませんが、旧モデルよりもダンパー径を拡大して容量をアップ。なんとBセグであるにもかかわらず、アテンザと同クラスの径だそうです。
そして、逆にスプリングとスタビライザーレートを弱めることで、凹凸を乗り越えた際によりしなやかな追従性を得ることに成功しています。
出典:CX-3の新設計タイヤ http://www.mazda.co.jp/
それだけではなく、サスペンションと並行しタイヤについてもCX-3のための新型タイヤの開発。
サイド部分のコンパウンドを柔らかく変更された新型の専用タイヤを装備したことで、静粛性がアップ。サスペンションジオメトリー(基本設計)自体は変化させることなく、乗り心地を向上させました。
ライバルと比較した場合、C-HRはこのクラスでは珍しく、リアサスペンションにダブルウィッシュボーンを採用しており、登場時より乗り心地に優れているのが特徴です。
ヴェゼルはド・ディオン式トーションビームですので、CX-3に対する構造的な優位性はありません。
今回の変更でライバルたちの差がどれだけ縮まっているのか、購入を検討されている方はぜひ試乗時にチェックしてみることをお勧めします。
大幅な乗り心地アップの秘密はそれだけではありません。
ルーフ(天井)部分の消音に影響するシーリング材の厚を6mmから8mmに大幅アップ。同時にドアパネル(ドアの鉄板)の厚さをい0.65mmから0.72mmにアップ。さらにリアウインドウ厚くなっているとのこと。これにより外部からの騒音もより遮断されます。
もともとコンパクトカーのなかでは静粛性の高いと言われるデミオと比較しても1ランク上の静粛性をもっていたCX-3ですが、今回の改良により乗車した際の違いはより鮮明なものになっています。
CX-3は同じBセグの「デミオ」では設定のなかった「BOSEサウンドシステム」のオプションもありますので、車内で音楽を楽しみたい方には静粛性アップは非常に有効なアドバンテージとなるはずです。
また、エンジンの排気量に変更のない2Lガソリンエンジンについても上記の改良が行われており、エンジンの軽量さからくるバランスと回頭性の良さで、高回転まで踏み込めるスポーツモードつきATも悪くない出来栄えです。
パワートレイン(エンジン)の進化
今回の改良点で、スペック上の大きな変更となったのはやはり、ディーゼルエンジンの排気量が1.5Lから、1.8Lに拡大されたことでしょう。
面白いのは今回のエンジンの排気量アップはCX-3のデミオとの差別化という意味ではなく、「最適化を行なった結果が1.8Lになった」というのがマツダさんの答えのようです。
スペック面では最大トルクは27.5kgf・m/1600〜2600rpm。最大出力は116ps/4000rpm。
旧モデルとトルクの数値は同じですが、馬力は11PSほどアップされています。1500rpm前後からのデミオに対する車体の重量のアップから考えると、パワーアップというよりも本当に適正化されていると感じます。
また、2Lのガソリンエンジンでも、2psの出力アップと3Nmのトルクアップが行われており、50kgほど軽量な車体により数値以上に乗りやすくなった印象を受けます。
1.8Lディーゼルとなったメリット
この1.8Lディーゼルエンジンの素晴らしいところは、単純に排気量の拡大がされているだけではなく、上位の2.2Lディーゼルに採用されている技術をフィードバックすることで、燃焼効率がよくなり実燃費の向上が図られているところです。
マツダのクリーンディーゼルターボエンジン「スカイアクティブD」は、他社のクリーンディーゼルエンジンと比べて、アドブルーなど尿素の補充は不要な点が優れており、排ガス中に発生したスス(PM)をDPF(フィルター触媒)で濾し、定期的に高温で燃焼させることで、フィルターをクリーンに戻すというシステムを採用しています。
このシステムの欠点はDPF再生には燃料を使用するため、DPF再生中の燃費が非常に悪化することです。
CX-3では今回の排気量アップによって燃焼効率が最適化されたことにより、DPF再生のインターバルが公称値で50%アップしたと言われています。
また、排気流領のアップと燃焼効率アップによって、再生時間も半減しています。
排気量アップによるエンジンの重量増が心配されますが、マツダによると各部品の軽量によってエンジンの重量はほとんど変わらない数値となっているとのこと。
これにより、エンジンそのものの燃費数値は大きく変わることはなくとも、DPF再生における燃費の悪化を最低限に抑えることができ、より実燃費がアップすることになっています。
1.8Lディーゼルとなったデメリット
出力と実燃費の向上、DPF再生スパンの半減で重量アップなしというと、基本的にSKYACTIV-Dの1.8L化によるデメリットは無いようです。
ただし、1.5Lより排気量区分が1ランクアップしますので、年間5000円ほど税金がアップ。つまり維持費が上がることになります。とはいえ、もともとガソリンモデルは2Lですし、年間の走行距離がそれなりにある方であれば、良くなった燃料費で十分にカバーできる程度の金額ではあります。
自動車税
排気量 | 税額 |
---|---|
660cc以下 | 10,800円 |
1000cc以下 | 29,500円 |
1000cc〜1500cc | 34,500円 |
1500cc〜2000cc | 39,500円 |
2000cc〜2500cc | 45,000円 |
もう一点、静粛性が上がったことにより、気持ち室内に入ってくるエンジンノイズなどが気持ち上がっているような気もするのですが、オーディオを流していると分からないレベルの差となります。
ノイズについてはユーザーによって許容範囲が異なりますし、それによる好みもあります。
個体差やどうしても気になる方もいるかもしれませんので、購入を検討されるなら試乗時に確認してみる必要がありそうです。
インテリア(内装)質感の向上
センターコンソール上部はこれまでとほとんど同じとなっていますが、エアコンのコントロールからコマンダースイッチ付近が一新され、非常に上質な作りとなっています。
ちなみにマイナーチェンジ前のCX-3オーナーが書いたレビューや比較サイトのコメントによると、CX-3(2018モデルチェンジ前)の悪い部分として下記のような点が挙げられます。
- 高いお金を出してLパッケージを購入したのにデミオと同じラチェット式のシート調整
- いまどきのSUVでパーキングブレーキがサイドタイプで電動ではない
- センターアームレストがついてない
- カップホルダーが使いにくい
今回の年次変更によって、上記の問題点は全て対応された形になります。
マツダのCX-3に対する姿勢が、ただのデミオのSUVルックモデルではないという意思を感じさせますね。
シートの質感と乗り心地がアップ
シートはフラッグシップSUVである「CX-8」と同じ高減衰性のウレタンが採用。
見た目だけでなく乗り心地も向上しています。
上位グレードのLパッケージについては、メモリー機能付きの10Wayパワーシートというこだわりぶりです。
後部座席にもアームレストとドリンクホルダーが追加
後部座席については広さなどに変更はありませんが、しっかりブラッシュアップされています。
旧モデルではデミオと同様の形状のコンパクトカーらしいシートを質感アップしたものでしたが、今回のモデルでミドルクラスのセダンのようなドリンクホルダーつきアームレストが追加されています。
出典:CX-3 http://www.mazda.co.jp/
電動パーキングブレーキの採用でプレミアム感がアップ
今回のモデルチェンジによるCX-3は上位車種のCX-5と同様にパーキングブレーキが電動化されたことで、オーディオやマツコネを操作するコマンダースイッチが小型化され、カップホルダーが前に移動して使いやすくなりました。
電動パーキングブレーキは軽い力でスイッチを操作するだけで確実にパーキングブレーキをかけることができます。
オートホールド機能もついており、発進の際にはスイッチを押すか、アクセルペダルを踏み込むと自動的にパーキングブレーキが解除されるため、信号待ちや渋滞時などにも便利です。
また、アームレストの追加と下にあるマルチボックス(小物入れ)も使いやすくなりました。
ちなみに筆者は通勤用に旧CX-3と同じセンターコンソールレイアウトのデミオXDを使っていましたが、旧モデルのレイアウトではカップホルダーが後ろ過ぎて、走行中にペットボトルを取るのは少し慣れが必要でしたので、これは嬉しい変更点です。
エクステリアデザインの改良
イメージ的には大きな変更はありませんので、どこを変更したのか分からない方もいらっしゃるかもしれません。
変更点としては純正アルミホイールのデザイン、ラジエーターグリル、テールランプ、ピラーガーニッシュの意匠などがブラッシュアップされました。
細かい点ではありますが、都市型SUVとして少し落ちつきが出たように見えます。
CX-3の4WDモデルの雪道での走行性能は?
CX-3はSUVとはいえ、最低地上高はそれほど高くないため、深雪などでは特筆するほどの雪道走行性能を持っているとはいえません。
しかし、圧雪路面などスリップしやすい路面で4WDモデルの走行性能という意味であれば、上位のCX-5と同様にマツダの電子制御4WDシステム「i-ACTIV AWD」が装備されており、安心して走行することができます。
ただし、やはりロードクリアランス(地上高)が少ないため、新雪の深い路などでは気をつけて走行する必要があります。
このあたりはスバルの4WDセダンなどと同じように考えると良いでしょう。
優れた走破性能と燃費性能を両立 ドライバーには感じとれないほどわずかなタイヤスリップなどをリアルタイムにモニターし、路面状況をいち早く予測して駆動力を積極的に自動制御する先進の4WDシステムです。スイッチなどで2WDと4WDを切り替える必要がなく、走破性能と燃費性能を両立。走りの楽しさと感動の世界をさらに大きく広げます。
出典:マツダ「i-ACTIV AWD」
CX-3の価格は
CX-3の大まかなグレードの価格は下記のようになっています。
ガソリン2L
20S 2WD(4WD) :¥2,127,600(¥2,353,600)
20S PROACTIVE 2WD(4WD) :¥2,332,8001(¥2,558,800)
20S L Package2WD(4WD) :¥2,566,080(¥2,792,080)
ディーゼル1.8L
XD 2WD(4WD) :¥2,436,480(¥2,662,480)
XD PROACTIVE 2WD (4WD) :¥2,630,880(¥2,856,880)
XD L Package 2WD(4WD):¥2,836,080(¥3,062,080)
ちなみにライバルはホンダのヴェゼルやトヨタのC-HRになります。
価格を上級モデル同士で比較すると、ヴェゼル「ハイブリッドZ」のセンシングが、2WDで「¥2,710,000」、4WDで「¥2,926,000」となります。
C-HRは比較が難しいのですが、パワートレインは1.2Lターボ、1.8Lハイブリッドがあり、4WD設定があるのは1.2Lターボのみです。上位のG(1.8Lハイブリッド)は2WD専用で「¥2,929,200」となっています。
シートや静粛性など装備や質感を含めてコスパを比較すると、CX-3は非常に優れていることがわかります。
また、ライバルたちに比べるとCX-3はカーナビゲーションを約5万円(48,600円)のSDカードを購入するだけで追加できます。
ナビの性能は特別良いものではないのですが、モニターが通常はオーディオ表示になっている方など、日常的にナビゲーションに頼った運転を行わない場合には悪くない選択であるといえます。
ただし、ナビゲーションを社外品に変更できないのが欠点です。
もちろん高額なカスタマイズ費用を捻出できれば、オーディオプロショップなどでビルトインモニターを追加することも技術的には可能です。
逆に完全にナビゲーションに頼った走行しかしない方の場合、エントリーグレードで8.5万円、C-HRの9インチT-Connectナビで25.8万円程度のオプション料金追加となっても、優れたナビゲーションを選択できるライバルの方が有効な選択となるでしょう。
まとめ 価格の価値を見出すことができるようになった1台
これまでのCX-3はデザインや走りもよかったのですが、ライバルと比較した場合に価格の割に少し足りないところがある印象でした。
しかし、2018年5月のマイナーチェンジによって、デミオとの価格差や同価格帯のライバルたちと比較した際の価値を見出せるようになっています。
使い勝手はダントツの車内スペースを誇るヴェゼル。
ハイブリッドのイメージやトヨタのブランド、ヤンチャで個性的なデザインではC-HRが有利です。
ライバル2台はどちらも魅力的なSUVではありますが、CX-3も他の車種にはない気品のようなものを持った、落ち着いたかっこよさを醸し出すデザインを持っています。
また、ライバルに引けを取らない優れた燃費性能と余裕の動力性能や4WDの走行性能も魅力です。
流行りに流されない大人の個性を演出できるコンパクトSUVを求めているのなら、日常の足としてだけではなく、リゾートに乗り付けても恥ずかしくないデザインのCX-3を検討してみるのはいかがでしょうか?
もし、実際に購入を考えるのであれば、必ず各社のライバルもしっかり試乗し、「見積もりを取っておく」ことが大切です。
見積もりは本命の購入時、値引き交渉の時に有効な武器になります。
条件を満たせば何万円もお得に購入できたり、逆に損することもあったりします。
まずはしっかりと見積もりを取って、目当ての販売店で良い条件を引き出しましょう。
あとは現在の愛車の査定を少しでも高くできるように工夫して、お得に愛車を手に入れましょう。
それでは、あなたが最高の愛車と出会えることを願っています。