あなたが日常的に運転しているクルマの変速機(トランスミッション)。
大きく分けてMTとATがあることはご存じだと思います。
現在は新規登録車両の99%がATというデータもあることから、多くの方が乗られているクルマはAT車が占めています。
しかし、ATの中にもいくつか種類があることは意外と知られていないものです。
自動的にクルマがシフトチェンジを行うという点は同じでも、変速機の種類によってかなりクルマの乗り味が変わってきます。
今回は意外と知られていない、クルマの変速機の種類についてご説明します。
MT、トルコンAT、CVT・DCT・AMTなど、変速機の違い知ることで、次の愛車選びが変わるかもしれません。
車の変速機(トランスミッション)とは
クルマにおける変速機とは動力伝導装置であり、エンジンから伝えられた動力の減速比を変更できる機構のことでもあります。
代表的なものには全ての操作を手動で行うもの。
- MT「Manual Transmission」(マニュアルトランスミッション)
- ドグミッション(競技車両など)
変速操作を自動で行うもの。
- トルコンAT「Torque converter step Automatic transmission(トルコンステップ・オートマチックトランスミッション)」
- DCT「Dual Clutch Transmission(デュアルクラッチトランスミッション)」
- CVT「Continuously Variable Transmission(無段変速機)」
- AMT「Automated Manual Transmission(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)
などがあります。
それでは代表的な変速機の特徴を見てみましょう。
マニュアルトランスミッション(MT)の特徴
マツダ SKYACTIV-MT 画像出典 http://www.mazda.com
MTとはマニュアルトランスミッションの略で、クルマの変速機としては最も古典的な機構のひとつです。
主にクラッチペダルで動力伝達のオン・オフを切り替え、レバーの手動操作(マニュアル)で変速比の切り替え(ギアチェンジ)を行う変速機(トランスミッション)のことをいいます。
複数の歯数の異なる歯車の組合せの内から、ドライバーが希望するギアを選び、エンジンが発生する回転エネルギーを動力に変換して車軸に伝える仕組みとなっています。
減速比の異なる複数の段(ギア)を切り替える際、動力の伝達を一時的に切るためのクラッチ機構に加え、回転差を同調させるためのシンクロメッシュ機構を採用しているものが一般的です。
シンプルな構造で動力の伝達効率にも優れ、部品点数が少なく軽量で、生産コストも安いのが特徴です。
ダイレクトにクルマを操っている感覚が強いことから、スポーツドライブを楽しむ方には根強い人気があるのもMTの特徴です。
ペダル&レバーによる変速操作もドライビングの楽しみのひとつとして認識されており、あえてMTを選ぶ方も少なくありません。
残念なことに最近では一部のスポーツモデルを除き、MTを選択するユーザーが激減し、MTの設定のない車種やMTがむしろ高価になってしまう車種も少なくありません。
営業車などにもAT車が増えており、トヨタのサクシードなどもMTが廃止されたため、就職の際に必要となる資格欄に普通運転免許「AT免許不可」などの表示も少なくなってきています。
それでも地方の営業車や配送トラックなどでは、まだまだ古いMT車が使われていることが多いため、簡単に無くなることのない変速機といえます。
代表的なMT車:
ロードスター(マツダ)、86(トヨタ)、フェアレディZ(日産)、WRXSTi(スバル)、エブリィバン(スズキ)、M3(BMW)など
オートマチックトランスミッション(AT)の概要
ATとはオートマチックトランスミッションの略で、クラッチの操作と変速操作を自動化し、ドライバーの操作負担を軽減した変速システムです。
MTと違い「AT限定」の普通免許で運転することができます。
ひと昔前は「男性がAT免許なんて」と冷やかされたりもしたものですが、最近の都市部では入社時に運転免許がなくても問題ない企業も多く、MT車に乗る機会もないということで、若い方は免許取得時に教習料金が1万円ほど安くなるAT免許を選択する方も増えています。
「男性でも若い方は25%程度はAT免許」なんてデータもあるようです。
自動で変速を行ってくれるAT車で、普段は意識せずに乗っていることが多いのですが、下記のように多種多様なシステムがあります。
トルコンAT「Torque converter step Automatic transmission(トルコンステップ・オートマチックトランスミッション)」の特徴
トヨタ Direct Shift-10AT 画像出典 http://newsroom.toyota.co.jp/jp/powertrain/transmission/
トルコンAT、正式には「トルコンステップ・オートマチックトランスミッション」と言います。
流体継手の一種であるトルクコンバーター(トルコン)によって動力を伝達し、段階的に変速するATシステムです。
ATのなかでも古くから採用されており、現在も多くの車種に採用され続けている方式となっています。
初期のトルコンステップATは動力の変換ロスも多く、効率的に動力を伝達するために多段化すると大幅にコストがかさむことから、3速ATか4速ATが主流でした。
しかし、現在ではコンピューター制御が進むことで、より細かな制御が可能となり、動力のロスや燃費悪化などのデメリットも薄まっています。
また、車格に応じた変速数を採用することで、コスト面の問題も解消されていくようになってきました。
そして、2010年頃からは、安価な軽自動車やコンパクトカーではコスト重視で3速ATか4速AT。もしくは後述のCVT。
大衆車では4速ATから6速AT。高級車では6速ATや8速ATなどが採用されるなど、住み分けが進んでいます。
イメージの画像はトヨタの2016年に発表された、FR用新型10ATです。
代表的なトルコンAT車:
クラウンロイヤル(トヨタ)8AT、エクストレイル(日産)6AT、アテンザ(マツダ)6ATなど
DCT「Dual Clutch Transmission(デュアルクラッチトランスミッション)」の特徴
Mercedes-benz 7G-DCTデュアルクラッチトランスミッション 画像出典 http://www.mercedes-benz.co.jp
DCTは奇数と偶数段にそれぞれ分割された2組のギアセットを用意し、それぞれにクラッチ機構を持つトランスミッションです。
変速の仕組みは奇数段を使用中、偶数段を既にギアを準備しておきます。奇数ギアセットと偶数ギアセットのどちらにつなぐかをコントロールするために、ギアは予め繋がった状態にすることができます。
これによって奇数段から偶数段への切り替えの際、動力が切れて空走してしまう時間を理論上カットすることが可能となり、極めて高速なシフトチェンジが可能となります。
古くは1960年代に発表されたホンダマチックなどが有名ですが、現在は電子制御が加わることで自動化と高速化がなされており、高速シフトチェンジが大きなメリットとなるスポーツカーなどを中心に採用されています。
現状ではパーツ増による重量やコストのアップ、メンテナンスコストの増大というデメリットもありますが、欧州車ではダウンサイジングターボ車両などを中心に採用が進んでいます。
代表的なDCT車:
911(ポルシェ)、GTR(日産)、A3(アウディ)、ゴルフ7(フォルクスワーゲン)、など
CVT「Continuously Variable Transmission(無段変速機)」の特徴
スバル リアトロニック 画像出典 https://www.subaru.jp/brand/technology/story/lineartronic.html
CVTはトルコンステップAT同様、スタート時にはトルコンをしています。
しかし、ステップATのようにギアセットを変更することで変速を行うのではなく、2組のプーリー(滑車)の間にベルトやを掛け、油圧調整でプーリーセットの有効径を変更することで、無段階に減速比を変更する仕組みとなっています。
コンピューターが回転数に応じて減速比を変更することで、非常に効率良くエンジンの動力を使用することが可能です。
限られた動力性能を最大限に活用することに向いており、小排気量の軽自動車やコンパクトカー、ハイブリッド車に多く採用されれいます。
理論上は非常にメリットの多いCVTですが、積極的な多段化(減速比のワイド化)する場合には、コスト増大以外にトランスミッションのサイズアップにもつながってしまうことから、大排気量車などにはあまり採用されないというデメリットがあります。
また、アクセル開度に従いコンピューター制御で減速比を調整するため、クルマ好きの方のフィーリングに合わないという場合もあり、CVTには乗りたくないというユーザーも存在します。
代表的なCVT車:
プリウス(トヨタ)、アクア(トヨタ)、レガシィ(スバル)、マーチ(日産)、シャトル(ホンダ)、スイフト(スズキ)など
AMT「Automated manual transmission(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)」の特徴
スズキ AGS 画像出典 http://www.suzuki.co.jp/car/technology/ags/
MT車のトランスミッションをベースに、クラッチと変速の操作を自動化したトランスミッションです。
基本構造はMTですので、ダイレクトなフィーリングを受け継いでいます。
また、シンプルなシステムであることから、コンパクトでコストも安く軽量で、燃費の良さなどMTに近くなっています。
デメリットは、現在のところ少々変速時のショックが大きく、スムーズさに掛けるというくらいでしょうか。
操作感覚に少し癖がありますので、通常のステップATやCVTしか運転したことがない方は違和感を感じることが多いでしょう。
スズキの開発した「AGS(Auto Gear Shift・オートギヤシフト)」、フィアットの「デュアロジック」、プジョーの「ETG」もAMTの一種です。
代表的なAMT車:
アルトワークス(スズキ)、MR-S(トヨタ)、208(プジョー)、500(フィアット)など
まとめ
いかがでしたか?
現在では上記のような変速機が主流となっているのですが、ハイブリッドATとも呼ばれる副変速機ギアを持つCVTやDCTにトルクコンバーターを内蔵している変速システムも登場しています。
各変速システムのデメリットもメーカーの技術開発により、ある程度は解消されつつありますので、今後のメーカーの動きにも注目していきたいところです。
これからクルマを購入される方はカタログのデータに惑わされることなく、まずは試乗してみることをお勧めします。
自分の運転フィーリングにあったトランスミッションを選択することで、より充実したドライブを楽しむことができるはずです。
これから免許を取ってみようと思っている方は、普段の移動だけならAT免許でも十分かもしれません。
しかし、MTを運転できることで、心の余裕と楽しみの幅は広がります。
一生に何度もあるわけではない運転免許の取得です。
無料体験教習を行っている教習所もありますので、試しにMT免許に挑戦してみるのも悪くない選択肢ですよ。
それでは、あなたが最高の愛車と出会えることを願っています。